高校生向け家庭科機関紙に着物リメイク記事寄稿
今日は少しアカデミックに着物リメイクの専門店カナタツ商店が、全国の高校生の家庭科の機関紙であるFHJ(vol.676)に記事を執筆させていただいたので全文ご紹介します。🙌
このように全国の着物リメイク店の代表として執筆依頼をいただいたのは嬉しい限りです。
今回の記事では、古くなった着物やタンスに眠っている帯を新しい形に生まれ変わらせる「着物リメイク」の魅力と、その考え方などを高校生方に向けてお伝えしています。
着物リメイクは伝統への理解やそして資源の循環(SDGs)など現代の家庭科にも通じるテーマだと考えています。
若い世代の皆さんに、日本の美しい着物に込められた物語とリメイクで生まれる新しい価値を感じていただけたら嬉しいです😊
では、どうぞ!!

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【あなたへの質問】
いきなりですが、あなたに質問です。
写真の着物を使用して着物リメイクを仕事とする私が絶対に作らない商品は、以下のいずれだと思いますか?
①巾着など、こども用のアイテム
②ご祝儀入れなど、慶事用のアイテム
③お数珠入れなど、法事用のアイテム
例えば高校生の皆さんや先生が、コンテスト等に向けて着物や帯を素材としたリメイクやアップサイクルを考える場合、その理由は様々です。生地の質感が良かったり、素敵な色だったり、生活様式の変化で出番のない着物を活かしてみたい等、多様な切り口がある中で、今回は興味の取り掛かりとしてまず「柄」にフォーカスし、皆様に着物リメイクのポイントお伝えしたいと思います。
【業界歴20年以上の私の感動】
全国高校生クリエイティヴコンテストの出品作品を見て、私は凄く感動しました。私の専門である着物や帯のリメイク/アップサイクル作品が多数ある!この業界で20年以上仕事をし、露店から百貨店、メディアまで様々な場所で移り変わりを体験してきた私にとって本当に嬉しい事です。私個人としては学生の皆様の柔軟な感覚と自由な発想で、いろいろな作品が出品されることを心から望みます。制約を与える事は豊かな才能に蓋をする事になりかねませんから。
しかし、今日はその可能性しかない感性に「この辺を知って活かすとさらに作品に深みを与えるよ」というプロの着物リメイク屋の視点と、仕事をする上でのセオリーともいえる手の内の一部を紹介します。
とは言え、それは正解ではありません。紹介した内容を外しての制作も一業界人として応援しますので、一つの考え方や視点として次の時代を担う若きクリエーターの皆様の参考となればよいと思います。
では、冒頭の質問に戻ります。
【良い理由 「柄」編】
この着物の犬の柄を活かしてリメイクすれば、上質な生地の質感や柄の強さを押し出すだけでも素晴らしいものとなりますが、さらに着物や柄の持つ意味まで踏み込むとその作品に説得力が生まれます。
この着物は、成長が早くまっすぐと伸びる「竹」、また動物の中では子ども(子犬)が丈夫ですくすくと育ちやすいといわれる「犬」の柄からなる子どもの着物です。それぞれが幼い子どものすこやかでまっすぐな成長を祈念した親の想いの溢れる柄で構成されています。「犬」&「竹」は、子どもの着物にこそのシンボリックな柄といえるのです。であれば着物リメイクの専門家として「①巾着など、こども用のアイテム」を制作する事は大正
解です。コンテスト的なアプローチで考えてみても、素材として着物という純粋な視点から「柄への理解」を伴う事で、着物や帯のリメイクは日本の服飾文化を表す作品として一気に深化するのではないでしょうか。
では、残る「②慶事用アイテム」「③法事用アイテム」の NGはどちらになると思いますか?
【NG の理由 「組み合わせ」編】
子どものすこやかな成長と健康を祈った竹と子犬は、二つが組み合わされ新たな意味を生みます。それはこの柄を漢字に変換すると≪笑≫という漢字になることです。着物の柄をそのままに上に「竹」、下に「犬」としてみてください。
再度柄を見直して、上の意味が分かるとビックリしませんか?
このような基礎知識があれば、この着物で慶事のアイテムへのリメイクは非常に相性が良いものになり、逆に絶対 NG はお数珠入れや香典入れなどの法事用アイテムとなります。
もし、私の会社でこの着物を使用して法事用アイテムの制作依頼がきてもお断りします。
学生の皆様が素材として見ている着物を、柄そのものの理解から柄の組み合わせによるメッセージまで理解出来れば、「着物」を通して日本文化の立体的な広がりを感じる事ができるでしょう。
さらに着物や帯の柄などの意味に想いを馳せる事、例えば冒頭の着物の様に、誰かに向けて込められた誰かの深い想いを考え想像してみる事は大切であり、そのこと一つで日本の服飾文化はあなたの前に大きな扉を開けてくれるはずです。柄のみならず、色や縫い目にも意味があったりします。軽い気持ちで着物や帯を使ってみようと思った方にはかなり大変な事になりますが、柄一つでも奥が深く、このようなディテールを積み上げて商品として提供する私達の仕事に少しでも興味を持っていただければ嬉しいです。

【着物は必ず反物に戻る!】
次に、着物リメイクに取り組むときに私達にとって軸といえる部分に関してお話しします。
それは「着物は必ず反物に戻る」という事です。これは「素材」という側面で着物をとらえたときにも非常に重要な要素です。
現在、着物や帯を素材としてリメイクする場合、和裁の技法で縫われたものを洋裁の技法で作り直すことが一般的です。
まずは、必ず反物に戻る和服と反物に戻らない洋服との違いについて、比較文化論的に考察してみたいと思います。
◎和裁:生地は長方形のみで必要な生地分量は共通。そして、着物は必ず反物に戻る。
≪着物ありき≫着る人が着物に合わせるように着物の着付けは体型に対して非常に柔軟に対応が出来る。
◎洋裁:生地を人に合わせ裁断するため必要生地分量はそれぞれ異なり反物には戻らない。
≪人ありき≫それぞれの人・体形に合わせて生地を裁断して服を作る。その為、体形が変わったらオーダーメイドのスーツは着る事が出来ない!という事が起こる。
洋裁に関して西洋の文明から考えてみると、人間を中心に発展してきたからこそ服の方が人間に合わせるような作り方になっているのだと思います。同時に、欧米を中心とした合理的で消費を良しとする資本主義の発達とともに、民族衣装よりも扱いが簡便な「洋服」が普及した事が想像できます。経済的視点からも、着物の市場規模の縮小と洋服の流通量の増加には相関性が見られます。
しかし、古来より日本には生地(着物)などを再利用し循環させる仕組みがありました。その仕組みの起点が「着物の仕立て」であり、着物はほどいてしまうと必ず反物に戻るという全国共通ルールにあります。持ち主が変わっても再利用が極めて容易なことから、江戸時代には新反を扱う呉服店よりも古着屋の方が多かったといわれています。かつては形見分け等で長く受け継がれており、人の寿命以上長く使うことが出来る着物に人間の方が合わせ、着物の劣化と共に使い方をスライドさせて使い切る事を行っていました。着物として着古したら野良着、野良着として役割を終えれば裂織や襤褸(ぼろ布)、その後は雑巾と徹底的に「リメイク/アップサイクル」する DNA が日本の服飾の歴史にはあります。私達の服飾文化と根底に流れる精神は、今風に言えば正に SDGs なのです。
着物や帯を素材に使用する際、「型紙に対して着物や帯を合わせていく」という洋裁的な考え方と「反物から制作するものを考える」という和裁的な考え方ではアプローチがまったく異なります。私達は着物リメイク専門店としてビジネスをしているので、常に「反物の幅」や着物や帯の「柄のおさまり」という事を強く意識をして商品開発をします。
今後、制作に素材として着物の使用を考えるのならば、着物に直接ハサミを入れる事はせず、リッパーを片手に着物をほどく事にトライしてみて下さい。「着物」がどう縫われ、四角い布だけでどう構成されているか、作り方を理解しながらほどく事は私がここでお伝えしている「着物は必ず反物に戻る」、ということや「受け継がれる」という事を体感できると思います。
但し、これはどちらが正しいかという議論ではなく、『製作者としてあなたはどう考えるか』という事が重要です。着物や帯の持つ文化的背景をまったく意に介さず、ツイル生地やファスナーなどと同様に一つの素材として考え自分なりの哲学を表現する方にも、私は心からエールを送りたいと思います。
【高校生の皆さんへ】
私たちの知識や経験が皆さんの今後の制作活動やサスティナブルな取り組みを考える場面で、「着物を使ってみよう」と試みるきっかけになれば、本当に嬉しいです。
着物が受け継がれるように、私達のバトン(想い)を受け継いでくれたらと、期待しています
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高校生向けに「分かりやすく」を軸に着物リメイクについて寄稿しました。
着物リメイクをお考えのお客様に私達の着物リメイクの考え方が少しでもお役に立てれば幸いです。
【お問い合わせ先】
電話: 096-285-6621(平日 10~17時)
着物リメイクのお店カナタツ商店 担当:小玉
日本全国対応可能です。


