「あんなに喜んだ事あったかな…」
震災のタイミングでの受注もそろそろ納品を終えて、
今日ご紹介しているお便りの様に、メールやお電話、お葉書などを頂いています。
私達のリズムで流れてゆく着物リメイクの一連の作業が完結する事で
熊本地震から季節が変わりつつあることを実感します。
週末から週明けと所用の為、熊本地震の震源地「益城町」に行きました。
私達が震災直後感じた「何から手をつけていいのか判らない」という状況が
今も崩れた家が立ち並ぶ益城町全体にはあるように思います。
益城町に向かう車窓から建設中の仮設住宅を見て
東日本大震災のあと、仮設住宅に納品させて頂いた案件を思い出しました。
「津浪で海水を被った想い出の帯を何か形に残したい」
すると、私の想い出が連鎖して
原発の影響で不本意ながらも他県に避難されたお客様の案件を思い出しました。
「若い時に買った着物だけは手元においておきたかったから」
当時、他にも何件も震災関連のご相談がありました。
着物リメイクに対して頭でっかちな技術的な事から
「人」に向き合う事に切り替わる大きなきっかけの一つだったと思います。
自分自身が被災して形にならないものが
人生にいかに大きな意味を与えるのか、
どれほどかけがえが無く貴重なのか
体験として強く刷り込まれたように思います。
「想い出」や「繋がり」や「優しさ」…
仕事で言うなら「技術」、「知識」、「信用」…
だから、私達は着物リメイクという我々の生業を通して
その「形にならない大切なもの」を誰かに提供するお手伝いが出来たならば
着物リメイク屋冥利に尽きるし、本当に幸せだと思うのです。
「あんなに喜んだ事あったかな…」
こんな嬉しい言葉はありません。
想い出が着物リメイクで新しい形になって
お客様の生活の彩りとなってくれたなら
それは私達にとってもお客様にとっても幸福な仕事だと思います。