慢心の怖さ…私達の厳しい戒め

今日は私達の基本姿勢である

「お客様の着物への想いを受け止める」

「一枚一枚異なる着物に真摯に向き合う」

という姿勢が明確に確立された恥ずかしい経験をまとめます。

私たちは約５年前にネット専業の着物リメイクの専門店として起業し、

着物リメイクのお店カナタツ商店を立ち上げました。

それまで呉服店、イタリア留職、婦人服メーカー、着物リメイク専門店と

非常に着物リメイク色の強いキャリアを積み上げてきた私と

イタリア留学、裂き織り作家アシスタント、着物リメイク専門店と

私同様のキャリアを積み上げてきた加菜子さんは自分たちの培ってきた力を信じつつも、

ビジネスとしての着物リメイク市場の未成熟さに不安もありながらの勝負でした。

当時の私たちは二人とも共に着物リメイク専門店に在籍していたことで

特に経年の着物や帯に関する知識、扱いには自信があったし、

着物を（洋裁の考え方で）縫製する経験もしっかり積んでいたので

市場を開拓するつもりで受けれる仕事は何でもうけてやろうと

野心的に貪欲にお客様のご相談を受けていました。

そして、立ち上げ当初はそうじゃないと全く喰えませんでした。

そんなときに頂いたのが

「お母様の着物から介護用のチュニックへ」という「お任せ」の仕事でした。

今でも思い出せば恥ずかしく、お客様に申し訳ない思いで一杯になりますが

間違ったがむしゃらさと過信に満ちた当時の私たちは「介護用の服は何が重要なのか？」

その本質を知らぬまま（向き合おうともせずに）

自分たちの知識と技術ならデザインさえ決まれば

簡単に製作出来るだろうと実に軽くその受注を受けました。

お客様にご要望やサイズ、詳細を伺い、デザインは打ち合わせをしていたし

（基本的にお任せでしたし）、同業の先輩方に「介護用の服」の注意点を伺い、

それに沿った「つもり」になって自信を持って納品させていただきました。

…ここまでの文章をお読みになってのとおり、当時の私たちは慢心と不勉強の塊。

「言われたとおりに作りましたよ」と言わんばかりの傲慢さ。

今の私達が第一の心構えとして掲げている

「お客様の想いを受け止める」

という姿勢とは著しく乖離しています。

そのリメイクに込めたお客様のお母様への想いは

当時の私達にはおざなりだったのかもしれません。

当然お客様に厳しいお叱りのお言葉を頂きました。

介護用の服を作ったことが無いのに聞きかじった情報と

机上の知識だけで製作したので当たり前です。

もしお客様の想いをきちんと咀嚼できていたならば違う提案も出来たのかもしれません。

お客様のお言葉を読み（メールでした）自分たちの浅はかさを心から恥じ、

「お客様の着物にハサミを入れる」という重さに心の底の底から打ちひしがれました。

今現在の自分たちが生業としているお客様の着物を預かってからの着物リメイクは

自分たちが経験を積んだ自分たちの仕入れた着物をリメイクすることとは

まったく意味が異なり「お客様の想いもお預かりしている」のです。

そのことが初めて心底身に沁みました。

文字通り痛感しました。

本当に本当に申し訳なくすぐにお電話を差し上げて謝罪をし、

お手紙を綴り、その後、しかるべき対応をさせて頂きましたが、

どんなに当方が出来る限りの誠意を尽くしたとしても着物は元のかたちには戻らないし、

リメイクへ託した想いも戻すことは出来ないのです。

形の無い着物に込められた想いの「重さ」…。

私達着物リメイクを生業とするものが中心に据えるべき重さであることを私は学びました。

今でもこの時の事を思い出すと胸の奥が苦しく、

あのときのお客様に申し訳ない気持ちで一杯になります。

そして、あの日は私たちにとっての大きな大きなターニングポイントに

なっていることは間違いありません。

だからこそ今は「お客様の想いを受け止める」ということから

リメイクをスタートさせることを第一の哲学にして、テクニカルなことももちろんですが

「想いの大切さ」ということにウエイトを置く着物や帯のリメイクを行っています。

一枚一枚異なる着物に真摯に向き合って

「責任の取れない仕事は受注しない」という姿勢で毎日のご相談にお答えしています。

あの日以来、私たちは「お任せ」という注文を一切受注しないようにしていますし、

また自分たちに全く経験が無い仕事、想像が出来ない仕事や

同じ料金ならばもっと上手いプロがいる仕事に関しては

他の専門家をご紹介するようにしています。

例えば、過去当店にご相談のあった内容で言えば

「着物⇒羽織」「着物⇒二部式着物」のような「和装⇒和装」ならば

国家資格でもある一級和裁士の先生をご紹介します。

二部式着物などはやれないことも無いですが同じ料金なら

専門家である和裁士のほうが上手いです。

（「和裁」と「洋裁」の考え方の違いに関して）

着物の「額装」（着物の柄の良い部分を額に収める）ならば額縁屋さん。

ネットやイエローページなどで近所の額縁屋さんを探していただければ

着物リメイク店で提示できる分量とは異なり、本業ですので沢山の種類の額の中から

着物とあわせながらぴったりのものを見つけていただけると思います。

また、「着物ドレス」なども当店では受注していません。

手を広げれば技術的には出来なくも無いと思いますが、

私達が自分達のスタイルや仕組みをしっかり確立している

「洋服」や「バッグ」、「小物」への着物リメイクと異なり

当店ではドレス受注用の仕組みが確立していないので

同じような料金ならば専門にしているところにお願いされるといいと思います。

着物リメイクドレスには専門業者が沢山いらっしゃいますし、

私達が見ても素敵だと思う仕事も多く、私達は彼らの仕事に敬意を払っています。

何よりも着物ドレスを「専門」になさっている先はノウハウが確立しています。

今日は独立当初の私達の恥ずかしい失敗談を書きました。

いつか、そのお客様に改めてお詫びをお伝えできれば…と

思いつつ思い出せば今でも、多分これからもづっと、申し訳ない思いで一杯です。

謙虚に。

自分たちの出来ることだけを丁寧に…

そして、何より「お客様の想いを受け止める」。

少なくとも今はそう思って着物や帯のリメイクに取り組んでいます。

一度お持ちのお着物や帯を見せていただければリメイクの助言をさせて頂きます。
>カナタツ商店に着物／帯を見せてアドバイスしてもらう＜ご相談は今すぐ⇒０９６－２８５－６６２１まで
担当：小玉が電話の前でお待ちしています！！２０１６年３月９日
着物リメイクのお店カナタツ商店 @canataz からのツイート

「その着物、リメイク前にきちんと生地を検証しましたか？？」

多少の縫製の技術があれば専門店以外でも形にすることは出来るかもしれませんが、
長くご使用されるためには着物や帯の生地の検証が非常に重要です。
（タンスの中にしまいっぱなしの着物や
骨董市などで販売されている古い着物や帯には生地が弱くなっているものがあります）
長く使える着物リメイク商品を製作するためには必ずプロのアドバイスが必要です！

私達は古い着物／帯からのリメイクを専門に仕事をしています。
タンスの中に着物や帯が眠っている方はお気軽に今すぐご相談ください！