縫い目から「想い」を理解する。…着物リメイク専門店の視点。

着物リメイクを生業にして各年代の着物や帯を毎日毎日何十枚も見ていると実に沢山の縫いのバリエーションというか意匠/デザインを見ます。

その中で代表的な縫い仕事では刺し子、そして、背守り、付け紐飾り等が挙げられると思います。

市井の人々の願いや創造の喜びが垣間見れるそれらの意味を理解する事でそのような着物が巡り巡って、私達着物リメイク店に託されるとその歴史や想いの「重さ」を感じます。

例えば子ども用の着物の付け紐飾りで良く見られる意匠は「麻の葉」、もしくは、「輪鼓」と呼ばれる独楽ような柄です。(下の画像は実際にお客様にお預かりした子ども用の着物の付け紐飾りの「輪鼓柄」一例。)

着物リメイク屋としての知識としてなぜこの柄が子ども用の着物の付け紐飾りではよく見るのか。
直線的で縫いやすい反面、【「目」の多さ】という事もきちんと理解すべきです。以下で少し触れますが、縫い目の「目」には見守りの意味があるようで子どもの着物では意匠としてデザインされながら縫い目の多い柄を着物リメイクを専門で私たちのような各年代の着物を扱う人間は大変よく目にしています。

(参考記事:着物リメイクで知っておくべき呉服/着物リメイクの知識

服飾文化や民俗学的な側面から日本を考えれば、人間の英知を超えた自然界から「目」に大いなる力を感じ、この力にあやかって持って身を守る。という事を伝統的に引きついでいる事が判ります。

例えば今でも田畑の鳥よけには弓道の的のような「目玉」の形の風船を浮かべますし、自然界に目を向ければ鳥に食べられないように目玉模様を持った虫もいます。

自然に敬意を払う日本的な文化において動物が恐れる「目」(眼力)には魔除けの力が宿っていると考えるのはとても自然な事です。

おそらく目の力から転じて「縫い目」にも力があるとされ服飾では刺し子、背守り、と市井の人々の針仕事には非常に「縫い目」の多いものを見る事が出来るます。

知識としてなぜ付け紐飾りや背守りの意匠が凝っているのか、という事を学べば、着物リメイクを通してそのような仕事に多々出会えるのは非常に嬉しい喜びに変わります。

例えば親が子供を想い、背守や付け紐を縫う。時代的には家庭内の仕事だったろうと思います。
その着物が時と世代を超えて自分の子ども時代の着物を次の世代に引き継ぐためにリメイクに出される。

結局生活様式に合わせて「方法」が変わっただけで、その根底にある「想い」には何の変化も無いのです。

そもそも着物は世代間を引き継ぐことを想定されていました。
皆様、着物の反物を是非イメージして下さい。
着物というのは直線的に仕立てられているためにほどけば元の反物になるのです。

元の形状に戻るという事で新たに仕立てをすることが出来ます。
だからこそ体形が異なっても世代間で受け継ぐことが出来るのです。形見分けとして受け継がれてきたのです。(今私達が行っている着物リメイクは「着物」→「着物」の引継ぎが「着物」→「現代の生活様式に合わせた商品」に変わっただけにすぎません。)

その繋がる想いを理解する事、共感する事、それが着物リメイク店に最も必要な能力のような気がします。

そして、この日本の伝統や連綿とつながるそれぞれのお客様の家族の想いをきちんと受け継ぐことに心を砕く仕事こそ私たちの着物リメイクの形として目指しています。

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