着物リメイク論「着物リメイクに必要な三要素と私達の想い」

当カテゴリを「着物リメイク虎の巻」と題していますので私達の考える私達カナタツ商店の「着物リメイク論」をご紹介したいと思います。

まず自己紹介ですが、当ブログの文責は私「小玉達人」が担っています。
私は呉服店⇒イタリア⇒婦人服メーカー⇒着物リメイク専門店という経歴で着物リメイクに取り組んでいます。
2000年ごろにはすでに着物リメイクに取り組んでいましたのでキャリアとしては17年目になると思います。
(呉服店や婦人服メーカーの経歴を入れればもっと長いですが…微妙な所です)
カナタツ商店としては2010年に準備をスタートさせていますので今年で7年目に突入です。

「着物リメイク」を論ずる前に前提条件として知って頂きたいことがあります。

≪40兆円~54兆円≫

この数字は何だと思われますか?
文字通り天文学的な数ですがこの金額は各家庭に眠る『着物・帯の市場価格の総額』と類推されています。
(私もいろいろな資料で調べてはみたのですが正確な数字はわかりません。)

信頼のおける資料として矢野経済研究所のきもの年鑑を引用します。

私が呉服店に勤めていた時はよく「2兆円産業」という言葉を聞いたものですが現在の呉服業界の市場規模はピーク時の「6分の1」~「7分の1」程度に縮小しているようです。

いづれ当ブログでも着物文化の衰退に対して考察はしたいと思いますが今日は箪笥の中の着物に関して話をすすめます。
「着物」というものが保管される、受け継がれるという性格である事を考え、尚且つ、「平成」「昭和」「大正」…と年代をさかのぼるほどに着物が日常に密接だったことを考えればスタート時点をどこに置くかによって日本中に眠る着物全体の価格に大きなばらつきが出る事やとんでもない数字になる事は理解が出来ます。
いづれにしても莫大な量の着物が日本中にあるのです。これは皆様(もしくは実家)の箪笥を考えて日本中に想いを巡らせればイメージが出来ます。

そこでまずはその着物達の活用方法として最近隆盛を極めている着物の買取という事に関して目を向けてみます。
仕事柄、着物の買取りに関して質問を受けるのですが正直返答に苦慮します。
よほど新しい着物や久保田一竹の辻が花や人間国宝などの「作品」ならいざしらず、普通の家庭に保管されっぱなしで、たいした手入れをされていない昭和中期~後期の着物はまあ値段がつきません。
だから査定で落胆させないために現物を見ているわけでは無いけど目安として「1枚あたり0円から100円で計算しておくと心の準備はできる」という二束三文宣言をすることにしています。

実際にTBSの番組で紹介された着物買取の高額査定のポイント(低額査定のポイント)を引用します。

みなさんのご家庭に高額査定を期待できる着物はありましたか?私の感覚で言うと「売りたい」と相談を受ける着物は圧倒的に1から4に当てはまる気がします。
厳しい言い方ですが「ご自身がいらないものは他人もいらない」のです。

・着物を売ったところで二束三文…

・着物を身内に譲ろうにも生活様式の変化…

「じゃあ、活用しよう」と考える方に着物リメイクが受け皿になれば良いのですが、私達着物リメイクの市場の方がまだまだ未成熟。
「趣味で着物リメイクをしよう」という方に向けては古くは「暮らしの手帳」が取り組まれていましたし、今では「毎日が発見」「ハルメク(旧いきいき)」などの雑誌が本当に奮闘されていますし、最近ではハルメクと連動してユーキャンで着物リメイク通信講座も始まっています。

活用の方法としては着物買取なども一つですが、一方で着物の活用として着物リメイクを扱う業者がもっと増えても良さそうなものです。
では、なぜプロの着物リメイク屋というのはなかなか生まれないのでしょうか?

もっと広がりをうんでも良さそうなものですが私達のような受注型は「取り組んではみたが萎えた」という業者が多いと私は見ています。着物リメイクをビジネスとする為にはきちんとした勉強や技術の研鑽が必要なのです。
きっちり仕事として成立させるために必要な事を私なりに「受注型の着物リメイク」を因数分解して考えてみました。

着物リメイクを「生業」(趣味の着物リメイクは別です。自由に楽しんで下さい)としてお金を頂戴して提供する為にはとても大事な3要素があります。

まずは一つ目は

「縫製力」

縫製の技術的な事はそもそもその部分に技術が無いならば成立しないので言わずもがなですがやはり道具もとても大事です。
着物リメイクを専門的にやろうと思えば少なくとも小さな縫製工場程度の設備投資が必要になります。

呉服屋さん等に着物リメイクを取り組む先がありますが初期投資を要するこの部分は弱く家庭用ミシン/家庭用アイロンで対応している所も少なく無く、工場などと提携してる場合は「価格が高い!」という傾向があります。(一枚一枚柄を合わせたり、生地の確認を要して手間がかかる着物リメイクを工場やメーカーは嫌います)

二つ目は

「呉服力」

適切な言葉が思い浮かびませんでしたが「呉服の知識」というのは必須です。
個人的には着物リメイクにあまり縛りを入れたいとは思いませんが、お金を頂戴するプロとしては他人が見て違和感を感じない配慮というのは必要です。

例えば私は家紋のついた着物が玄関マットにリメイクされて置いてあればギョッとしてとても踏めないと思います。
また、着物リメイクのご相談には「形見分け」のご相談が少なくありません。その時の人気アイテムである数珠入れや香典入れがありますが法事のアイテムには心配りが特に必要です。

自分達のサイトからの引用で恐縮ですが例で言えば以下の様な知識は製作者は必須です。

この着物は子どものお宮参りなどに使用されていた着物です。柄を分析してみましょう。

「子犬」は他の動物と比べても病気が少なく非常に順調に育ちます。また「竹」は皆様ご存知の通り非常に成長が早く、尚且つ、真っ直ぐ育ち、常に緑で生命力に溢れています。共にお宮参りの衣裳として子どもの健やかな成長を願う親の想いが込められています。

そして日本の服飾文化の奥深さだと私は思いますが、それぞれ意味がある柄が複数組み合わさる事で、さらに別の意味を持ちます。

上の例同様に「竹」が入ったもので例を挙げるならば、皆さまご存知の「松竹梅」「四君子」などがありますし、上記の柄は漢字に置き換えると上に「竹」、下に「犬」「笑」という意味になります。
であれば、この柄で不特定の人が多数集まる法事の場で使う「香典入れ」「数珠入れ」などは適切なリメイクと言えるでしょうか?

この呉服の知識というのは補正屋さんや縫製工場が圧倒的に弱い部分です。そして、納品後に誰かに指摘されて(お客様が恥をかくような事になって)はじめてその間違いに気が付くというとても厄介な部分と言えると思います。

三つ目は

「生地への目利き」

これが一番言葉にしにくいのですが、箪笥に保管されっぱななしの着物や帯の生地の状態をきちんと見極める事が出来るかという点です。
写真では判りにくいですが以下の2種類の生地の違いは判りますか?着物リメイクを本業として取り組んでいる私達でも画像だけでは100%の判断できませんが(笑)、共に長くタンスに保管された薄い着物生地でありながら2つの生地の状態は全く異なっています。

生地としては手前の青い生地の方が薄いのですが丈夫です。一方で奥の水色の生地は一見丈夫なように見えますが経年劣化しています。軽い負荷で簡単に破けます。
この見極めが出来ないとスカートにしたら「一回はいたら裂けた」、バッグにしたら「重たい荷物を入れたら破けた」という事は容易に想像が出来ます。

本業として着物リメイクに取り組んで(プロとして看板を掲げるならば)予見しなければならない生地の経年の問題に対して「言われたとおりに作りましたよ」という答えは逃げ以外の何物でもありません。生地の状態を見極める力を培って責任を持って古い着物・帯に向き合う姿勢は求められてしかるべきだと考えます。

着物リメイクでは見落としがちですが実は非常に大事なポイントは「生地の見極め」となります。特にタンスに眠ったままの古い着物には生地が劣化しているものがあります。この見極めは縫製以上に重要な部分だと思っています。私達も感覚的に把握する「経験」の部分ですので説明が難しいですが、作る事だけ(形にする事)だけに目が行くと見落とす部分ですので要注意です。

この部分は着物リメイクに取り組んでやり込まないと中々身につかない感覚だと思います。(今でも年に1回ぐらい経年劣化の罠に引っかかるほどです。日々勉強です。)

今日お話したようにプロとしてして良い着物リメイクを提供しようと思うと実はこの3つの柱をしっかりと鍛えてバランスの良い三角形を作ることが実は非常に重要です。
この三角形のバランスが悪いと着物リメイクに取り組んでもどこかでミスをしたり、引っかかりがあって商売としては長く続かないのだと思います。

なお、私自身は着物リメイク作家のアシスタントととして下積みをしていますのでデザインに特化して素材として着物を使う、もしくはドレスに特化、などは別の座標軸で考える着物リメイクの在り方として追記させて頂きます。

上記を踏まえたうえで私達カナタツ商店の着物リメイクのぶれる事のない軸の部分について考えてみます。

さて、着物リメイクに依頼に出される着物とはどんな特徴があるでしょうか。

  • 入学式や七五三、成人式等で着物と共にうつっている写真がある。
  • 〇〇(例えばおばあちゃんやお母さん)が「よく着ていたな…」。
  • 両親が若い時、お金を工面して用意してくれた嫁入り道具や成人式の振袖…。
  • 社会人になって初めて自分のお金で買った。等

一つの例外もなく「すべて想い出とともに」あります。

逆に言えば何の思い入れのない着物がリメイクに出されることはありません。
リメイクへの着物や帯には想いが籠っているからこそ納品後私達には電話、メール、お手紙、お葉書などでお客様の声がとてもよく集まる特徴があります。

  (上の画像は下野新聞2015.11.7「読者登壇」より一部抜粋。全文はコチラ。当店の着物リメイクのお客様の投稿でした)

おそらく「着物リメイク」という看板を掲げているお店では日本で一番ご感想を頂いていると思います。
この沢山のお客様からのご感想の蓄積で私達カナタツ商店には明確でぶれない軸が確立されています。

すでにご説明しましたが良い着物リメイクを行なうために大事な三つの柱があります。

  • 縫製力
  • 呉服力
  • 生地への目利き

しかし、その技術以上に私達が最も大事に考えたいと思っているのがお客様のそれぞれの想いです。
それこそ私達の着物リメイクの根幹をなすぶれない明確な軸だと定義して着物リメイクに取り組んでいます。

その着物や帯に込められたお客様のそれぞれの「想い」「想い出」を受け止めて上の三つのスキルを駆使してカタチにする。
そんな着物リメイクこそ私たちの目指す着物リメイクの究極形です。

あなたの物語や着物への想いを聞かせてください。
「想い」と結びつくことで着物リメイクはもっと豊かなものになると思います。

その想い出をカタチにする着物リメイクのご提供を私達カナタツ商店は目指しています。


さて、「着物リメイクの事聞きたいけど…」「料金は?」「納期は?」と
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