和裁は「着物」ありき、洋裁は「人」ありき
今日のブログは『和裁』と『洋裁』のことを綴ります。
読者の方にこの違いを理解していただくとご自身で着物リメイクを行なう際や今後着物リメイクのお店を比較するときに多少お役に立つと思います。
さて、『和裁』と『洋裁』の違いって当ブログの読者の方はご存知ですか?
一般の方ならば『和裁=着物の仕立て』『洋裁=洋服の仕立て』という認識で結構ですが、和裁は「着物」ありき、洋裁は「人」ありきとスタートラインの違い、それぞれの哲学を知ると180度異なる考え方がわかります。
和裁は着物ありきなので反物に戻る事を考えて裁断と縫製が行われ型紙が無いのに対して、洋裁は人ありきなので人にあわせた型紙から裁断が行われ反物に戻すことは想定していません。
着物リメイクというのは「和裁」の考え方を理解した上で「洋裁」の手法を活用して作業をすすめる事です。
私たちはこのそれぞれの違いなどを理解したうえで和裁的な考え方に共感してリメイク後に反物に戻すわけではないですが着物の美しさを出来る限り残したいと考え「反物幅を活かす」「着物を活かす」リメイクを提唱しブログに綴っています。
『和裁』『洋裁』それぞれ多少判るとそれぞれで使う生地の特徴も判るようになります。
和裁ならば「綸子とは?」「絽とは?」「羽二重とは?」…
洋裁ならば「キュプラとは?」「ジョーゼットとは?」「オーガンジーとは?」…
実際の現場で使う生地一つ一つに対して知識と経験を積みながら着物リメイクを学びます。
着物生地のみならず生地全般の特性を知ることも着物リメイクの基本です。
お客様の中には稀に無駄なくリメイクされたいので「表/着物 裏/胴裏」のリクエストをされる方がありますが、特別なケースを除いては「着物リメイクなので着物リメイクジャケットの裏は胴裏使いました。」や「バッグの裏も無駄なく胴裏でリメイクしました。」等は実用性面では基本的にはお勧めしません。
しかしながら、別に何でも「着物リメイクですからジャケットもバッグも裏地は胴裏で…」というお店や作家を否定はしませんし、自由にご自身の感性を世の中に発信して頂いて結構です。
個人的には(着物リメイクを生業にしているプロの端くれとしては)実際に使って実用性を検証をしていないのだろうな…と思います。
(実例で裏付けします。着物リメイクでないテーラーなどでは高級ジャケットの裏地はキュプラが多いです。
正絹の裏生地は古いジャケットはともかく最近あまり見ることはありません。
理由はキュプラの方に滑りの良さを始め吸放湿性、制電性の軍配が上がるからです。
資料などで生地同士の比較を学んだり、実際に作って自分で着てみれば良く解る簡単な話です。
裏地に重要な摩擦刺激性等は絹よりも優位ですし、シワの問題ではかなり優位と言えます。
多少勉強すれば生地の適性を学ぶことが出来ますので「着物リメイクの裏地は胴裏」の固定観念は不勉強の裏返しです。
例はジャケットでしたが「生地の適性を考える」という同じ事はバッグ等の他のアイテムにもいえます。)
今日は『和裁』『洋裁』の違いを書いていますのでその流れで私たちの仕事と和裁士の先生の仕事に関しても触れておきます。
よくあるご相談が「着物」を「着物」に仕立て直すというご相談です。
例えば「着物→羽織」や「着物→二部式」などです。
中にはやろうと思えば出来るかも…という仕事も無くは無いのですが、それでも私達は「和→和」のリメイクは基本的に受け付けていません。
それはやっぱり「和→和」の仕立て直しは「仕立て直し」で「着物リメイク」というと違和感があるし、同じプロでも和裁士の方が上手だと思うからです。
ちなみに和裁士には「和裁技能士」という国家資格がありますが着物リメイク屋にはそういう資格がありません。(だから自称「作家」「職人」が沢山いて玉石混交な中々カオスな状態ですが…orz)
私達に「和→和」の仕立て直しの依頼が来た時は一級の和裁技能士の先生を紹介するようにしています。
ただ、逆に「和→洋」のリメイクならば国家資格の無い(笑)私達にも一日の長があると思います。
着物を洋服にする、とか、帯をバッグにする、とか、「和(着物)→洋(洋服・バッグなど)」は私達の出番だろうと思います。
この棲み分けというかプロ同士の譲り合いというのはお客様が最高の仕事を享受ために必要な事なのではないかな…と考えるのです。
最後になりますが、着物リメイクというのは突然変異で生まれた業界ではありません。
当ブログでも何度も綴っていますが、着物を再生するということは日本の服飾文化においてはるか昔から連綿と続く確かな潮流です。
それは冒頭書いた通り「和裁は着物ありき」という考えかたが底流にあるからだと思います。
私達はその文化を非常に素晴らしい事だと思うし、また、現代の生活様式に合わせながらも精神は受け継ぎたいと思います。
そして、私たちも先人・先輩から学びいまだに勉強の途中です。
そこには「守破離」のように守るべき事を学び、「守」を追求することで自分の形を作り、自在さを身に着けていくことが必要だと私たちは考えています。
ささやかですが今後も私達なりの着物リメイクを提案したいと思います。
カナタツ商店の他の着物リメイク・帯リメイクの製作実例はコチラから。
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