「着物警察」の記事に思う。… 着物リメイクは自由であれ!

最近ネット上をにぎわせている言葉「着物警察」

週刊女性2018年3月27日号
「着物警察」のせいで和装離れが加速、街中での警笛はもはやパワハラの域

なぜこのようなことになるのか…。呉服販売の歴史を俯瞰で考えると少し見えてくることがあります。

まずは呉服の衰退の話を少し。
当ブログでは私は呉服業界の出身者である事を当ブログでも時々触れています。
約20数年前、私が呉服の世界に入った際はまだまだ勢いがあったように思うのですが、市場規模ベースで見ると現在の呉服は最盛期の7分の1の規模になっています。

理由は色々な専門家から様々な指摘があります。
例えば「衣」「食」「住」の同時進行の戦後の変化の中で特に「住」の大きな変化が要因という指摘もあります。
着物の視点からみた住の部分の変化で最も大きいのは古い日本家屋にはでっぱりが無かった事。日本家屋は襖、障子、引き戸ばかりでポコンと出ている部分はありません。
たしかに和服の袖口や袂を考えるとドアノブなどのでっぱりは引っ掛けて不便です。日本家屋×和服は圧倒的に生活がしやすいです。
私は面白い指摘だと思いますし、生活様式の変化というのは「衣食住」が連動して変化する事に改めて気が付きます。

違う視点で見れば戦後呉服のルール複雑化した事も衰退に拍車をかけたという指摘があります。
複雑化というと古布(アンティーク着物)出身でもある私から見れば戦前の方が素材だけでも「絹」はもちろん「木綿」「麻」「モスリン」「人絹」と様々で、デザイン(意匠)も非常にバリエーションが多かったのですが、それは逆にルール的には「自由」であったことを示していて、「このシュチエーションにはこの着物」「この着物にはこの帯」というガチガチのルールは戦後生まれたものなのです。
この戦前の空気感をよく示している一冊が舟橋聖一著の小説「悉皆屋康吉」です。悉皆屋の視点を通して戦前から戦争に向かう空気(呉服の流れ)をとてもよく理解できます。
(この小説で今では準礼装として当たり前の訪問着が大正時代に三越によって発売されたことなど知りました。ですから大正以前の訪問着というものは存在しません。)

私は複雑化した呉服業界の中で社会人生活を始めていますので、戦後販売者(呉服店)が決めたルールを盲目的に信じていましたが、「そのルールを作ったのは誰なのか?」という転換点を考えればそれは実に販売者に寄ったものである事を知る事が出来ます。

呉服業界の市場規模は約40年前にピークを迎えます。
その7分の1の市場となった現在、その売り上げをささえているのが「振袖」「浴衣」などであることに対して、当時は日常に着る平服も含めて様々な着物が売れていました。
私の子ども時代を思い返せば洋服はもちろん多かったですが、和服をハレの日のみでなく、日常にも今よりももっとたくさん見ました。
私達着物のリフォーマーに依頼に出される着物には私の母世代の方から「嫁入り道具に持たせてもらった」という着物一式も少なくありませんが、まさにこれは当時様々な着物が売れていたことを示していますし、日常に着物そのものが溶け込んでいたことを示しています。

そして面白い事に(不思議なことに)「呉服の売り上げのピーク」と「反物製作数のピーク」は一致しません。
様々な文献でも指摘されていますが、「反物のピーク」のあとに「売り上げのピーク」がやってきます。
歴史的な評価をするならば、そのタイミングは平服も含めて日本の服飾文化を担っていた呉服が高単価/高収益のフォーマル専門にシフトしたタイミングだと思いますし、そう指摘する経営者やアナリストの方は多いです。
後日語るならばその変化は呉服の「終わりの始まり」だったのだと思います。

フォーマルであるが故に失礼はダメ。フォームに従う必要がある。そして、フォーマルは高くても仕方ない。
ならば「ルール」を決めれば売り手は売りやすく、買い手はそれに従うしかありません
ルールはそれを決めたものが強く、複雑化するほど優位になる(無知に付け込める)。
生活様式の変化と共に、そんな大きなうねりが呉服業界全体の飲み込んだように思うのです。
着物は(今の洋服と同様に)本来もっと自由であったのに、盲目的な「ルールを知っている」という優越感が着物警察を生んだ土壌の様に思うのです。

それは我々着物リフォーマーに突きつけられている課題だとも思います。
私はお金を頂戴する以上、製作に対して責任を持ちます。
生地の状態に対して耐用しえないアイテムはご希望があっても制作しませんし、柄とアイテムが不一致になるアイテム(例:おめでたい柄で法事用品)も勧めません。
それはこの着物リメイクという仕事を生業としている以上至極当たり前のことです。

しかし、私達着物リフォーマーが勝手にルールを作る必要はない。
個人レベルならばリメイクはもっと自由に作れば良いですし、そこで私達にアドバイスを求められるならば答えればいい。
着物リメイクにおいて私たち自らが「着物リメイク警察」をやる必要は無いのです。
(逆にデザインやアイデアを盗まれる「着物リメイク泥棒」の被害も少なく無いですが…(笑)。)

本来着物は再利用を前提として作られています。だからこそ、ほどけば必ず反物になりますし、当てがいをして次世代が使い、最後は雑巾になるまで使われたのです。そこにルールはありません。
その徹底した再利用こそ呉服の持つDNAだと私は思っていますし、だからこそ、育てて頂いたアパレルの世界に少しでの恩返しとインパクトを与えたいと思いこの仕事を続けています。

(着物リメイクにおいて)「〇〇はダメ」「✕✕はダメ」
それは自分の商品を正当化するための理由にしかすぎませんし、ルールを作る事で優位に立とうとする姿勢そのものです。今から着物リメイクをやろうと思う人を委縮させるだけだと思います。
裾野が広がらない限り、絶対に自分達の業界も広がるはずがありません。

僭越ながら当店のフォロワーやウォッチャーは多く、結構同業者や着物リメイク作家にも読まれているブログであると自負もありますのでそんな提言を投げかけてみます。

着物リメイクに関して判らないことがあればお気軽に当店へご相談下さい。先日も着物生地のアイロンかけ方のなどをご教授しました。
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